コラム

水上バイク(ジェットスキー)運転者必見! 知っておきたい海の交通ルール&マナー

広大な海を自由自在に駆け抜ける水上バイク(ジェットスキー)は夏に人気のマリンスポーツの代表格ですが、水上バイクによる事故や悲しいニュースが毎年後を経ちません。海でのレジャーを安全に楽しむためには、ライダーの一人ひとりが海のルールとマナーを深く理解し、遵守することが大切です。そこで今回は、水上バイク運転者が守るべき「海の交通ルール」とマナーについて解説します。

なぜ海のルールが大切なの?

ジェットスキーを運転するには、「特殊小型船舶免許証」が必要です。免許を取得するためには身体検査・学科試験・実技試験の3つに合格する必要がありますが、16歳以上であれば誰でも比較的容易に取得することができます。

その手軽さゆえに、ときに軽視されがちなのが「海の交通ルール」。海上はレジャーを楽しむ水上バイクやモーターボートだけでなく、漁船や大型貨物船、フェリーなど多種多様な船舶が行き交う場所です。そんな海上で安全にマリンレジャーを楽しむためには、衝突事故や水難事故を防ぐためのルールを守ることが大切です。陸上の道路に交通ルールがあるように、海上にもすべての利用者が守るべき交通ルールが存在するのです。

海の交通ルールを守ることは、自分自身の命を守ることはもちろん、同乗者や周囲の人の安全、そして大切な自然環境を守ることにも直結します。残念ながら後を経たない水上バイクの事故の多くは、ルールやマナーの不理解、軽視から発生しています。そのような事故を起こさないためにも、ルールを正しく理解し責任ある運転を心がけましょう。

水上バイク運転の基本! 必須の装備と確認事項

水上バイクに乗る前に、まず何よりも大切なのが「特殊小型船舶操縦士免許」の取得です。この免許がなければ水上バイクを運転することはできません。無免許運転は重大な違反行為なので絶対にやめましょう。

免許取得後は、以下の必須装備品を確認し出航前の点検を怠らないことが大切です。

特殊小型船舶操縦士免許


免許不携帯も罰則です。常に携帯を心がけましょう。

ライフジャケット(救命胴衣)

すべての乗船員は、国土交通省の安全基準に適合したライフジャケットを着用する義務があります。これは、万が一落水した際に命を守る最後の砦となります。ホイッスルなどの音響信号器具が付いているものが推奨されています。違反した場合は自動車免許と同じように違反点数が累積し、最大で6カ月の免許停止になるので注意してください

係船索(ロープ)

アンカーを打つ際や、他船に係留する際に必要となる基本的な装備品です。

小型船舶用信号紅炎

海上での緊急連絡手段としては携帯電話が有効ですが、防水機能や電波状況に注意が必要です。圏外の場合に備え、発炎筒のような「小型船舶用信号紅炎」も必ず携帯しておきましょう

船舶検査証書・船舶検査済票

水上バイクも船舶として、定期的な検査を受け、国の定める安全基準を満たしていることが義務付けられています。検査済票は艇体の見やすい場所に貼り付け、検査証書は必ず携帯しましょう。

このほかに推奨される装備として、ウェットスーツやラッシュガード(体温保護、擦り傷防止)、マリンシューズ(滑り止め、足の保護)、サングラス(日差し、水しぶき対策)、グローブ(手の保護)などがあります。ジェットに乗る際に必要な装備をまとめた記事もあるので、ぜひ参考にしてください。

<出航前の点検>

出航前には燃料は十分か、バッテリーは正常か、エンジンオイルの量、冷却水の確認など基本的な点検を必ず行いましょう。また、定員オーバーでの乗船は絶対に避け、最大搭載人員を厳守してください。

航行区域と速度制限

海上はすべての場所を自由に高速で航行できるわけではありません。安全を確保し、他の利用者との共存を図るため、航行区域や速度に関するルールが定められています。

航行区域

特殊小型船舶の多くは、通常「陸岸から2海里(約3.7km)以内」または「安全に発着できる場所から半径15海里(約27.8km)かつ海岸から2海里以内」に航行区域が限定されています。これは沿岸部に近い水域での利用を想定しているためです。自身の水上バイクの船舶検査証書で、正確な航行区域を確認しましょう。これを逸脱した航行は認められません。

速度制限

陸上と異なり、海上には明確な速度標識があるわけではありませんが、以下の状況では速度を落とす必要があります。

港内・漁港・航路

他の船舶の往来が激しいこれらの場所では、通常、波を立てない程度の最微速(概ね8km/h以下)での航行が義務付けられています。

海水浴場・遊泳区域

遊泳者やレジャーを楽しむ人々がいる場所への乗り入れは禁止されています。付近を航行する際は十分に減速し、安全を確保できる速度で航行しなければなりません。

他の船舶の近く

他の船に不快な引き波(ウェイク)の影響を与えないよう、十分な距離を取り、速度を落とす配慮が必要です。

見通しの悪い場所

岬の沖や狭い水路など見通しが悪い場所では、いつでも停止できる安全な速度で航行しましょう。

ローカルルールや条例がある水域

地域の特性に合わせて、都道府県や市町村が独自の条例やローカルルールを定めている場合もあります(例:琵琶湖ルール、特定の湾内での航行規制など)。利用する水域の最新のルールは出航前に必ず確認しておきましょう。地域のマリーナやショップで情報収集するのも有効です。

航法の基本ルール

海上の交通ルールは、衝突を避けるために国際的に定められている「海上衝突予防法」に基づいています。これは、水上バイクを含むすべての船舶に適用されます。

右側通行(対面の場合)

陸上の交通と同様に、対面で他の動力船と行き会う場合は互いに針路を右に転じ、相手の左舷側(船首を向けた時の左側)を通過するように航行するのが原則です

追い越し船

後方から他の船を追い越す場合は、追い越される船の針路を避け、十分に離れて追い越しましょう。追い越された船は、針路や速力を維持することが原則です。

横切り(右舷優先)

右舷側(自分の右側)から他の船が見え、衝突のおそれがある場合は、その船の進路を避けなければなりません。基本的に右側に見える船が優先です

非動力船・漁船への配慮

カヌー、SUP(スタンドアップパドルボード)、ヨットなど、動力を持たない船に対しては、水上バイクが常に避航義務を持ちます。大きな引き波を立てないよう、十分に距離を取り、速度を落として通過しましょう。また、操業中の漁船や漁網には絶対に近づかないでください。漁業活動を妨げないよう最大限の配慮が必要です。

このほか最も重要かつ基本的なルールは、常時適切な見張りを行うことです。前方はもちろん、後方や左右、水面下まで常に周囲の状況を注意深く見て、他の船や障害物、人などを早期に発見できる体制を維持しましょう。高速度での急旋回や蛇行運転は、見張りを困難にするため極めて危険です。

錨泊(停泊)と係留のルール

水上バイクを一時的に停止させる、あるいは陸に繋ぎ止める際にも、安全と他の利用者への配慮が求められます。

錨泊(アンカリング)の場所

船舶の航路や漁業区域、養殖場、ケーブル敷設区域など、他の船舶の航行や漁業活動の妨げになる場所での錨泊は禁止されています。また、海水浴場や遊泳区域付近での錨泊も事故に繋がる可能性があるため避けるべきです。アンカーを打つ際は、周囲の状況を十分に確認し、他の船舶と接触しない距離を保ちましょう。水深が極端に浅い場所や岩礁地帯は避け、プロペラや艇体を損傷する可能性がないかどうかも確認してください。

係留の場所と方法

不法係留は禁止されています。マリーナや公共の係留施設を利用する場合は、必ず管理者の許可を得て定められたルールに従ってください。私有地の護岸や桟橋に無断で係留することも禁止です。係留する際は、強風や潮位の変化にも耐えられるよう、適切なロープの結び方と十分な強度を確認しましょう。岸辺に乗り上げる場合は、艇体を損傷しないよう慎重に行い、他人の迷惑にならない場所を選びましょう。

緊急時の対応と救助の義務

海上では予期せぬトラブルが発生することもあります。万が一の事態に備え、冷静な対応と周囲への配慮を忘れてはなりません。

緊急時の連絡

海上保安庁への緊急連絡番号「118番」は必ず覚えておきましょう。国際VHF無線機を搭載している場合は、遭難信号を発信できます。圏外など携帯電話が繋がらない場合は、信号紅炎を使用します。

<使用方法>
1.赤いキャップを外します。
2.キャップに付属のスリ紙に発火点をこすります。手に持ったまま使用し、着火すると紅色の炎が1分以上発せられます。
3.他船等に発見されやすいよう風下に向けて高く掲げます。決して筒先は人にむけないでください。

救助の義務

海上において他の船舶や人が遭難している、あるいは危険な状況にあると判断した場合は、救助活動を行う義務があります(海上衝突予防法)。自身の安全を確保しつつ、可能な範囲で救助に協力し、海上保安庁に連絡しましょう。

落水時の対処

自分や同乗者が落水した場合は、速やかに救助し再乗船させることが重要です。とくに寒い時期の落水は、低体温症のリスクがあるため迅速な対応が求められます。ここでもライフジャケットの着用が命を救う鍵となります。

燃料切れ・故障時

航行不能になった場合は、速やかに海上保安庁や近くの助けを呼べる場所に連絡しましょう。漂流して他の船舶の航行を妨げないように可能であれば錨を打ち、位置を固定するなどの対応も検討します。

環境に配慮した運転

水上バイクを含むマリンレジャーは、水辺の自然環境と密接に関わっています。海を利用するひとり1人が、その環境を守る意識を持つことが非常に重要です。燃料やオイルの漏れは、水質汚染に直結します。燃料の給油時には、燃料をこぼさないよう細心の注意を払いましょう。また、海上や浜辺にゴミを捨てることは絶対にやめましょう。釣り糸やプラスチック製品、空き缶などは、海洋生物に深刻な影響を与えます。発生したゴミはすべて持ち帰り、適切に処理してください

環境保護のために航行が制限されている区域への立ち入りもNGです。干潟や藻場、サンゴ礁など、生態系にとって重要な場所や、渡り鳥の飛来地、魚の産卵場所などには絶対に侵入せず、自然環境に最大限の配慮を払いましょう。

水上バイクは非日常の感動と最高の体験を与えてくれる素晴らしいマリンスポーツですが、一歩間違えれば重大な事故に繋がりかねない危険もはらんでいます。海の交通ルールとマナーを守って安全にマリンレジャーを満喫しましょう。

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